16,039
回編集
細編集の要約なし |
細 (→発現調節機構) |
||
43行目: | 43行目: | ||
[[ファイル:Okuno Arc Fig2.png|サムネイル|'''図2. Arcの活動依存的転写機構''']] | [[ファイル:Okuno Arc Fig2.png|サムネイル|'''図2. Arcの活動依存的転写機構''']] | ||
=== 発現調節機構 === | === 発現調節機構 === | ||
神経細胞において''Arc'' mRNAの発現はシナプス入力によって巧妙に調節されている。シナプス後部へのシナプス刺激により[[NMDA型グルタミン酸受容体]]と[[電位依存性カルシウムチャネル]]の活性化によって細胞内への[[カルシウム]]流入が生じ、[[カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ]]([[CaMK]])経路および[[MEK]]-[[ | 神経細胞において''Arc'' mRNAの発現はシナプス入力によって巧妙に調節されている。シナプス後部へのシナプス刺激により[[NMDA型グルタミン酸受容体]]と[[電位依存性カルシウムチャネル]]の活性化によって細胞内への[[カルシウム]]流入が生じ、[[カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ]]([[CaMK]])経路および[[MEK]]-[[MAPキナーゼ]]経路の活性化を引き起こす<ref name=Kawashima2009><pubmed>19116276</pubmed></ref> 。また、細胞内カルシウムイオン上昇は[[カルシニューリン]](CN)を活性化し、CN依存的経路を活性化する。さらに[[BDNF]]を含む多くの[[神経調節ペプチド]]は''Arc'' mRNAの発現誘導作用を持つ。これら複数の細胞内シグナルは[[核]]へと伝えられ、各シグナル経路に対応する[[転写因子]]および[[転写コファクター]]の活性化を引き起こす('''図2''')。''Arc''遺伝子の転写調節領域には複数の[[プロモーター]]・[[エンハンサー]]が同定されているが、中でも、マウス''Arc''遺伝子の転写開始部位7 kb上流に存在するエンハンサーである[[SARE]] ([[synaptic activity-responsive element]])はArcの神経活動依存的な転写誘導に重要な機能を有する<ref name=Kawashima2009><pubmed>19116276</pubmed></ref> 。SAREには[[CREB]]、[[SRF]]、[[MEF2]]などの主要なシナプス活動依存的な転写因子の結合配列が含まれており、これらの転写因子および[[コアクチベーター]]が協調して、Arcの高いシナプス刺激依存性を実現していると考えられる<ref name=Okuno2011><pubmed>21163309</pubmed></ref> 。 | ||
一過的なシナプス刺激が与えられると核において数分以内に''Arc'' mRNAの新規転写が開始される。この核内でのmRNA合成は一過的であり、刺激停止後には速やかに完了する。一方、新規合成されたmRNAはその後、細胞質に移動しタンパク合成に供される。このような細胞内mRNA局在の時間的変化を利用して、異なる2時点における神経活動状態を1細胞レベルで可視化する方法が考案されている<ref name=Guzowski1999><pubmed>10570490</pubmed></ref> 。 | 一過的なシナプス刺激が与えられると核において数分以内に''Arc'' mRNAの新規転写が開始される。この核内でのmRNA合成は一過的であり、刺激停止後には速やかに完了する。一方、新規合成されたmRNAはその後、細胞質に移動しタンパク合成に供される。このような細胞内mRNA局在の時間的変化を利用して、異なる2時点における神経活動状態を1細胞レベルで可視化する方法が考案されている<ref name=Guzowski1999><pubmed>10570490</pubmed></ref> 。 |